ロマンスは失恋の味?

 先週投稿した3曲の中の一つは、ロマン派の時代のギタリスト兼作曲家、メルツによる『ロマンス』。初心者向けの定番曲だ。20小節のごく短い曲だけれど、9小節から12小節にかけての4小節でちょっと盛り上がり、一旦落ち着いて、またちょっと派手なエンディングを迎える。そういう意味では、小品ながらロマン派らしいドラマティックな展開の片鱗が感じられる曲と言っていいかもしれない。

 こんな小品にそんな大仰な解説を付けることもないだろうという声があるかもしれないけれど、レッスンという観点からは、私は初心者が小品をさらうときでも、それなりに構成を考えて弾くのが望ましいと考えている。実際には、まずは譜読みで、どこをどの指で押さえてどの指で弾くか…ということを探り、理解し、そして練習してまずできるだけ間違えずに弾けるようにする、これが練習の第一段階だろう。ただ、ここで肝心なのは、これは「練習の第一段階」に過ぎないということ。じゃあ、次は何をするかというと、構成とかプランとかを考える、というわけだ。本当は、譜読みの段階でそこまでできればいいのだけれど、大方の初心者はそんな余裕はないと思うので、二段階になる。

 しかし、そうなると、「構成とかプランって何?」という疑問が湧いてくると思う。実際、弾くだけで手一杯で余裕もないし、構成だとかプランだとかよくわからないし、どうしたらいいの?…というのが実際なので、現実的な対策として、私が生徒さんによく勧めているのが、「イメージを持つこと」。先生の演奏なり、CDなりYouTubeなりで参考になる演奏を聞いて、その曲のイメージを具体的に持って弾くようにするといいですよ、ということ。これには批判的な意見もあるだろうけれど、個人的には私自身、そういうアプローチで曲に取り組むことは多いし、現実に効果が感じられる対処法だと思っている。

 メルツの『ロマンス』では、もうずいぶん以前、小学生だった生徒さんにそんな風に「何かイメージを持って」と言ったら、「フラれたときの気持ち」というイメージに落ち着いたと、その後お母さまから聞いた。小学校低学年でもうそんな気持ちがわかるの~?という驚きは置いておいて、そんな気持ちを演じながら(あるいは悲しみに酔いながら?)弾いてみる。「構成とかプラン」ってそういうことなの?…ときかれたら、ちょっと違うかもしれないけれど、ポイントは「何も考えずに指の運びだけ気にしていてはつまらないですよ」ということなのだ。

 ブローウェルの『11月のある日』では、私は海辺を歩く青年…みたいなイメージが浮かぶことが多いのだけれど、ある若い生徒さんは、「お腹が空いて歩き回ってるイメージです」と断言した。これは、正しいかどうかという話ではないので、人それぞれでいいんだと思う。音楽はやはり「表現」なので、指のことばかりに気を取られず、構成やプラン、そもそも「表現したいもの」を持って弾くのが本来。そういう「演奏」の第一歩として、「イメージのすすめ」なのです。面白いと思ったら、試してみてください。

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