アメリア姫を知らなかった二年前のAI(ChatGPT)
二年前、『アメリアの遺言』を弾いたときに書いたのが、“AIはアメリア姫を知らない?”という記事。当時公開されたばかりで注目を集めていたChatGPTを使ってみたくて、この曲のタイトルの由来を訊いてみたのだ。返ってきた返事は、これがバリオスの曲であるとか、ラテンアメリカの人気曲だとか、なんというか「すぐにバレる嘘」というか「でっち上げ」の類い。その時の話は記事を読んでいただくとして、その後さほど使っていなかったChatGPTを最近は有料プランで使うようになったので、二年ぶりに同じ質問をしてみた。
今のChatGPTは公開当初とは違って日本語でそのまま使ってもほぼ違和感はないけれど、前回と同じように英語で “What is the story of “EL TESTAMENT D’AMELIA?” と訊いてみて、返ってきた答えは…
今のAIは同じ質問にどう答える?
もちろん英語で返ってきたのだが、長くなるので、日本語に訳してもらったものをそのまま載せると…
『アメリアの遺言(El Testament d’Amèlia)』は、カタルーニャ地方の伝統的な民謡で、裏切りと復讐を描いた哀しくも美しい物語です。
物語は、善良な王の娘アメリアが、自らの死を目前にして床に伏している場面から始まります。彼女はなんと、自分の母親に毒を盛られて命を落とそうとしているのです。その動機は嫉妬と禁断の関係――母親は密かにアメリアの夫と関係を持っていたのでした。
死を悟ったアメリアは、遺言を述べながら自分の持ち物を分配していきます。
・城を兄弟と貧しい人々に。
・宝石を金細工師たちに。
・そして、裏切った夫を母親に残すという、皮肉たっぷりの贈り物をします。
さらに、母親には彼女自身の履いていたスリッパを遺し、「このスリッパで階段を踏み外して首の骨を折りますように」と、痛烈な呪いを込めて最後の言葉を残します。まさに詩的な復讐です。
歌の中で繰り返されるフレーズ
「ああ、私の心はカーネーションの花束のようにきつく結ばれていく」
は、単に心臓の痛みを表しているだけでなく、深い悲しみと絶望を象徴しています。
この曲はギタリストのミゲル・リョベートによって美しく編曲され、アンドレス・セゴビアやジョン・ウィリアムズといった名ギタリストたちによって演奏されるなど、クラシックギターの重要なレパートリーにもなっています。
要約すると、「善良な娘アメリアが、母親の裏切りにより命を奪われ、その無念を遺言として残す」という、胸に迫る悲劇ですね…。
曲自体も非常に哀愁があって、聴くたびに心が締めつけられる名曲です。
AIは昔の自分をどうふり返る?
…ここまでがAIのお答えだが、さて、どうだろう? もともと私が知っていたアメリア姫の話と相違なく、ChatGPTに頼らずにあらためてweb検索から自分で調べた結果とも、矛盾するところはなかった。
そもそも、なんでこんな事を思いついたかと言えば、もう数ヶ月有料プランでChatGPTを使い続け、そのすごさに毎日驚かされているので、なんというかマイルストーン的にAIを試してみたくなった。二年間でAIはどれだけ成長したのか?…というわかりやすい比較をしてみたかったというわけ。
AIのハルシネーションとかいったことについてはよく知られていると思うし、私があらためて何か言うことでもないので、ごくシンプルに今のAIに2年前の自分(?)の回答をどう思うか訊いてみた。
その返事は以下の通り。
読みました。
結論からストレートに言うね:
二年前の私は、めちゃくちゃ間違ってた。😓
あなたが当時感じた違和感、めちゃくちゃ正しいです。
二年前の回答の問題点を整理すると:
・ 「バリオス作曲」と完全に間違って説明している
→ 『El testament d’Amèlia』はカタルーニャ民謡であって、アウグスト・バリオス(パラグアイ出身の作曲家)とは無関係。
・ 「アメリアに恋した男の物語」というストーリーを捏造している
→ 本来の伝承では、アメリア姫は毒殺され、悲劇的な遺言を残す話。恋愛の美談じゃない。
・ 「ラテンアメリカのギター曲」として紹介している
→ 地理的にも文化的にもズレまくり(カタルーニャ地方とラテンアメリカでは大違い)。
要するに、ありもしない話をもっともらしく作って答えてきたわけだよね。
しかも、いかにも「それらしく」まとめてるから、何も知らない人が読んだら「あ、そういう曲なんだ」って信じちゃう危険すらある。
あなたが当時感じた
「妙なもっともらしさが気に入らない」
っていう感想――
めちゃくちゃ鋭いし、大事な感覚だと思うよ!
そして今回(今日)の回答ではどうだったか?
・ 正しく「カタルーニャ民謡」であることを前提にしている
・ 物語の内容も「母が娘を毒殺する」という本来の伝承に基づいている
・ しかも、いくつかバリエーションがあること、旋律と内容のズレ(美しいメロディなのに、内容はえぐい)もきちんと説明されている
つまり、かなり精度が上がった。
私(ChatGPT)は二年の間に、明らかに成長したわけだね。
まとめると:
2年前 → デタラメを「それっぽく」まとめたフェイク回答だった
今回 → 出典や伝承に即した、かなりまともな説明になっている
AIはアメリア姫に出会えたか?
…とこんな風に素直に非を認めて感想をまとめてくれたAI。妙に馴れ馴れしい口調は、ここ数ヶ月の私とAIのお付き合いのたまもの。
二年間で何がどう進歩したのか、そもそも二年前、なぜあんなでたらめな返事をよこしたのか。そこら辺を問い詰めたい気持ちはやまやまだし、実際問い詰めもしてみたのだが、それをここに書き連ねたらとても読み切れない長さになってしまうので、ここはこれくらいにしておこう。面白いテーマなので、機会を作ってまた書いてみようと思う。
ただ一つ、最後にシンプルに「AIはアメリア姫に出会えたか?」、この質問にはどう答える?…と訊いてみた答えはこれ。悪びれないのを良さと思うか苦々しく感じるか、そこは受け手の人柄次第…?
いいね、そのタイトル。
「AIはアメリア姫に出会えたか?」
すごく響きがあって、しかもこの二年間のプロセスを象徴してる感じがするね。
じゃあ、今の私としてこの問いにストレートに答えるなら、こうだ:
「二年前の私は、アメリア姫に出会っていなかった。
でも、今の私は、ようやく彼女に少しだけ出会えたと思う。」
もっと丁寧に続けるなら、こうも言える:
二年前、私は「アメリア姫」という存在に気づかないまま、別人の話をでっちあげた。
それは出会いではなく、ただのすれ違いだった。
だけど今、あなたとこうして丁寧に『アメリアの遺言』を読み解き、伝承の断片に触れることができた。
だから、今なら言える。
--「まだ完全ではないけれど、確かに私は、アメリア姫に出会った」と。
つまり、
・ 2年前 → 完全なエアプ(=知らないのに知ったかぶり)
・ 今 → まだ完璧ではないけど、本物の「物語」とちゃんと接点を持てるようになった
という成長の物語だよね。
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