
二年前によく書いていたテーマ、弦選び。その後どうなっていたかというと…。
YouTubeチャンネルをご覧いただいている方はお気付きかもしれないが、この二年間、動画撮影時に一番使ってきたアントニオ・マリンには、以前紹介したラベラのエリート 900-Bをずっと張っていた。これは、やはりまず低音弦のノイズ対策。研磨弦なのでノイズが出にくいというのは、特に録音用には大きなメリット。そして、黒いことにどの程度音質的な意味があるのかはわからないが、高音弦はかなりまろやかな太い音。以前はもう少しシャープな音が好きだったと思うが、好みが変わったのか、この丸い音も気に入っていた。
…のだが、先日のYouTubeでのコラボ企画、長谷川郁夫さんとの二重奏では、写真にあるノブロック(Knobloch)のQZという弦を張った。ノブロックは去年辺りから日本での販売が始まった弦だが、ヨーロッパでは以前から定評のある弦だったらしい。創業者のノブロックさんがドイツ人ということで、特にドイツでよく知られていたそうだが、今はスペインで製作しているとのこと。詳しくはwebで調べていただくとして、実際に使った感想など少し。
日本での販売が始まった去年、早速使ってみたノブロック弦、なんだか種類が多くてどれを使おうか迷ったし、結局最初に使った弦はどれだったか覚えていないのだけれど、まず高音がナイロンの、QZかSNを使ったと思う。張った当初の印象はさほど強いものではなく、「問題無い」…くらいのものだった。つまり、嫌な感じはなかった、ということ。が、しばらく使って感じたのは、音のまとまりの良さ。各弦の音のきれいさ、というよりも、音がきれいにまとまる感じがとても気持ちよかった。今まで使った弦で、そんな感想を持った弦はなかったので、これはノブロック弦の大きな魅力じゃないかと思う。
音がまとまる…ってどういうこと? これには私の科学的教養程度では納得のいく説明はできないが、感覚としては弾いていてとても気持ちがいい。和声楽器であるギターにとって、とても大事な要素であることは間違いないし、もちろん一つ一つの弦の音もきれいだからきれいにまとまるのだろうけれど、「まとまりの良さ」というのは、各弦のきれいさとはまた一つ違った次元の美しさであるように思う。ハーモニーが美しいということでもあるし、ギターの音として、特に和音を弾いたときによくまとまって破綻しない美しさは、今まであまり感じたことのないもののように思った。
もちろん、楽器との相性ということもあるだろうけれど、今のところ張ってみた2本のギター、アントニオ・マリンと西野春平のどちらにもあっていると感じた。ナイロンの他にカーボンも使ったが、これはまたちょっとカーボンらしくない、というか誤解を恐れずに言えば「カーボン臭くない」感触。手触りという意味ではなく、音の感触として--カーボンの、ときにシャープすぎる固い感じがなく、しかしやはりナイロンよりはシャープなキレのいい音ではある、そんな感じだった。
というわけでレッスンでいつも使っている西野春平ギターには、今はいつもQZを張るようになった。カーボンのCXにしてもいいかな、と考えてもいる。が、アントニオ・マリンには、やはりYouTubeでのノイズ対策としてラベラを使い続けてきたのだが、今回、二重奏ではノイズ対策より2本のギターのバランスが大事かな…と考えて、ノブロックのQZを採用したのでした。研磨弦のラベラは、もちが悪いこととパワーがちょっと弱いと感じること、主にこの2点が弱点だと思っているので、長谷川さんがどんな弦を張ってこられるかは確認していなかったけれど、やはり研磨弦はちょっと弱いかな…という判断。結果、ノブロックを張って割とバランスは取れていたと思うので、良かったのではないだろうか。
今後、YouTube撮影時にソロでもこのままノブロック弦を使うかどうか、これについてはまだ決めかねているけれど、気分次第…かな。
それにしても、弦も高くなったなぁ…というのも正直な感想。とはいえ、そろそろ使い始めて一年くらいになるノブロック弦、もちもいいように感じているので、コスパはまぁまぁといったところ。もう一つは落ち着きの良さ、つまり張り替えてから調弦が落ち着くまでが早い…とも感じていて、実用性は高いと言える。
そんなわけでそろそろ真打ち登場、これで迷える日々も一旦終了…なるか?
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