『現代ギター』誌に二年にわたって連載していたコスト版ソル教則本の翻訳が、今店頭に並んでいる2026年3月号で無事完了した。ソルが亡くなって数年の後に、ソルのオリジナルの教則本に弟子というか後継者であったコストが解説を加え、自らの練習曲を入れて教則本として出版したものだ。ソルのオリジナルの文章を割とそのまま使った部分もあるが、かなりコストの手が加えられたもので、コストの教則本と言ってもいいような著作。コストのエチュードとして日本で紹介されている曲はこの教則本からとられたものも多く、エチュードにいい作品が多いように感じられるところがソルに通じるようにも感じる。
連載は23回。二年間なのに23回?…と自分で一瞬不思議に思って思い出した、連載開始してまもなく一回休載したのだった。ちょうどその頃引っ越しをしていた私は、引っ越し間近の新居で真っ暗な階段を踏み外し、ちょっとした怪我をした。ひどい打撲で体中の痛みもなかなか引かず、やむなく休載をお願いするという情けない事態に至ってしまったのだった。幸い骨折はなく、比較的早くにレッスンには復帰できたし、後頭部には大きな傷を負ったものの今どきは髪を剃られることもなかったので、パッと見た感じでは仮病と思われかねないほど元気そうに見えていたらしい。その上今ではもう半ば忘れてしまっていたわけだけれど、実際はちょっとした騒動で、入院した救急病院では「これだけ出血してこんなに冷静な人は初めてです」と褒められてるのか呆れられてるのかわからないようなお言葉をいただいたりもした。そんなことを思い出して、それでも生き延びて無事翻訳を終えることができたのは、神様の気まぐれだとしてもあらためてありがたいことだと思う。
さて、コストの話に戻ると、コストの愛すべき小品エチュードは何曲もあるが、有名な「ニ短調のエチュード」の他に私が割と好きなのが、この「ニ長調のエチュード」。実はつい先日YouTubeで私のギター、モーリス・オティガー(Maurice Ottiger)を紹介したのだが、そこで「このギターはたぶんYouTubeで弾くのは初めてじゃないかな」なんて発言していたが、なんと2年も前にそのオティガーでこの曲を弾いていた。実にいい加減な記憶力。オティガーを弾いている動画は実は他にもあったけれど、まぁそれはともかく。甘過ぎないオティガーの音の良さは出ていると思うので、良かったらお聴きください。
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